技術に走ってモノづくりに傾倒していた時期がありました。そんな仕事ぶりに見切りをつけ、離れていった先生たちもいらっしゃいます。こうした過去の反省から、私たちは先生と患者様との対話を大切にする方針を固めました。ときに歯科医師と歯科技工士は主従関係と見られますが、私たちは「口腔内を見る視点が違う」と考えています。実際の口腔内を見ている歯科医師と、模型であらゆる角度から観察できる歯科技工士。それぞれの立場から意見を出し合い、ゴールを設定していく。このゴールが間違っていれば、どんなに技工物の完成度が高くても患者様の口腔内に合わず、健康に影響が出る可能性もあります。製作と同じくらい、その前の工程にも重きを置くのが私たちの方針です。
デジタル技工部 義歯課では、CAD/CAMを活用し、従来の職人技を大切にしながら効率化を図ることを念頭に日々製作を行っています。デンチャーが必要になるということは、なんらかの事情で歯を失ったということ。喪失感に加えて食事や会話という生活の楽しみにも支障が出てしまい、誰もが暗い表情をしています。そんな患者様にもう一度明るくイキイキとした毎日を取り戻してくれるのがデンチャーです。デンチャーを装着し、鏡を見たときの輝くような表情。あの笑顔をつくるお手伝いができることこそ、歯科技工士の存在価値です。
以前勤めていた会社と併せると、歯科技工士歴は計16年になります。その間にトラックの運転手や電気配線などの職人も経験しました。この業界に戻ろうと思ったタイミングで、当社のHPを見かけて、自由そうな社風に惹かれて入社。最初の会社は年配の方が多く、営業がいない小さな技工所でした。自分のつくったものは自分で持っていく形だったので、ドクターとやりとりができる面白さは、その時に学びました。規模が大きくなるほど、歯科技工士とドクターの接点がなくなっていきます。私の場合、前社での経験がベースにあるので、直接ドクターの声を聞く大切さは理解できているつもりです。患者さんが見えない分、ドクターと密なコミュニケーションを取ることで、つくるものは変えられます。これから会社の規模が大きくなっていっても、なるべく患者さんの意向を技工物に活かせるように、ドクターとのコミュニケーションを積極的に取っていきたいですね。
会社のトップが歯科技工士ではないので、業界の悪しき習慣にもなっていた就業環境の改善がなされている点が強みです。働きやすい環境が整うことで、技工物の質向上にもつながっています。また、時間にゆとりができることで、たくさんの中のひとつではなく、一人ひとりの患者様のことを見る時間が、前よりも持てるようになりました。忙しいとどうしても流れ作業になってしまうため、環境の改善は本当に大きな強みです。小規模な会社では難しい設備投資なども積極的に行っているため、歯科技工士としてはモチベーションが上がり、やりがいがあります。また、新しいもの、知らないものに対して、貪欲に求めていく姿勢を持ったスタッフが多く、チームワークも抜群。大規模な組織になってくると、部署間で壁ができてしまい、連携が取れにくくなるものですが、当社は社員同士の仲の良さはもちろん、そういったバランス面でも優れています。
2年間、歯科技工士としてZOO LABOに勤務していました。何か違う仕事に挑戦してみたいと思い、3ヶ月だけ不動産会社で売買営業を経験。日を追うごとに「売りつけている感」が自分の中で大きくなり、本当に人のための仕事なのかな…という疑問が生まれました。やはり自分は歯科技工士として、おじいちゃん、おばあちゃんのために、大好きなものづくりで貢献したい!という気持ちが強くなり、ここに戻ってきました。他の会社で再スタートを切るという選択肢もありましたが、人間関係の良さからやっぱりここに。義歯課だけではなくて、全社的に分け隔てなく話せる雰囲気があるので、部署間の連携もかなりスムーズです。裏表のないストレートな人が多いので、ごちゃごちゃした人間関係はなく、気持ち良くコミュニケーションが取れています。
以前勤務していた時は、保険対応の技工物製作を担当していました。復帰するにあたり、自分から自由診療向けの技工物製作をやりたいと希望し、今は金属床やノンクラスプデンチャーなど、新しい分野に挑戦しています。社風的に、やりたいと手を挙げることで、全面的にバックアップしてくれます。もちろんいきなり大きなところではなく、段階を踏んで成長していけます。投げっぱなしの状況には、まずならないので、先輩たちがしっかりとフォローしてくれるのも有難いです。今後は、同じ歯科技工士から見て、「すごい」と思われるような存在になりたいと思っています。会社としてつねに新しいことに取り組む、整った環境があるからこそ、自分も時代に追いついていけるような勉強をしていきたいです。